令和五年 明けましておめでとうございます
更新日:2023/01/01 10:13
令和五年 明けましておめでとうございます
『而二不二』
久しぶりに『行動制限のない』年末年始となりましたが、新年を自宅でお迎えの方も多いことでしょう。
元日の朝、郵便受けに届く年賀状を眺めながら、知己の一年に想いを馳せる楽しみもございます。そんな中、最近「年賀状じまい」ということが終活の一つとして話題になっています。
年賀状のやり取りを辞退すると伝える最後の年賀状のことで、定年退職や高齢になったことをきっかけとするようです。断捨離・墓じまいとともに、三大終活ということでしょうか。
佛母寺の檀家さんでも、後継者がいらっしゃらないということで、「永代供養としたい」とお申し出の方もおいでになります。
永代供養墓にご先祖様の納骨を済ませたのちも、ご命日には法事をされ、お参りも続けられます。年賀状も、いきなり「もう来年から出しません」とピシャっと切るよりは、若い人に倣うように、メールやLINEでご縁を繋げておいた方が豊かな生き方のように思います。
密教には、「金剛界と胎蔵界」という一見正反対のように見えて、対を成している世界があります。その間はほんの数センチ、まっすぐ同じ間隔を開けます。
この狭間の空間には、大日如来の八葉蓮華座があると心得ます。
左右二つの華は、別々の存在ではあるけれども、本来的には一体であるという考え方、『而二不二(ににふに)』といえましょう。
友人関係も親戚関係も何もかも繋がりは金輪際辞めますというのではなく、永代供養したから、もう墓参りも手を合わせることもしません、という白黒の線引きではないところに私たちの人生があるのではないでしょうか。
自己と他者、人間と自然、いずれも別々の存在ではあるが、一つにつながっている。
このような考えをもっていないと、これからの地球では、生きていくこともむずかしくなるにちがいありません。 (『二十一世紀に生かす真言密教の智慧 松長有慶著』)
過去を否定するばかりではなく、長き人生の中で自分が持ち合わせてきた良さに目を向け、長所を伸ばし跳躍する卯年としたいものです。
皆さまの一年が、明るく、お健やかでありますようにとお祈り申し上げます。 合掌
令和五年 正月 元旦
高野山真言宗 準別格本山 龍蓋山 佛母寺 住職 中島隆信