災害への備え:自分に出来ることを継続し、少しずつ範囲を広げて行きましょう

東日本大震災から12年目の春を迎えます。3年の長期に渡るコロナ禍、去年からはロシア・ウクライナ戦争も加わり、すぐ先の未来にも不安を感じることが多く、東日本大震災のことを思い出す回数もめっきり減ってしまったという方も多いと思います。

しかしながら人間の都合などお構いなしに、天災はやってきます。
皆さんの災害への備えはいかがですか?

昔の人は、音で人間同士の心を読み取ることができたばかりでなく、自然の声も聞くことが出来た(らしいです)

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明治29年6月15日に三陸地方に大きな津波がおそったことがある。そのとき、沖の方にノーンノーンという音が聞こえたという。昔からの言い伝えの残っているところでは、それは津波の音に違いないとて高いところに避難した。そうした村ではみな生命を助かった。
(宮本常一 伝書鳩のようにより抜粋)

同じような話を東日本大震災の後にもTVニュースなどで知る機会がありました。昔の日本には濃密な関係性のあるコミュニティがあり、そこで津波の情報も伝承されていたのだと思います。残念ながら特に都市部では自然の声は、完全に人工音に上書きされ、隣人・地域とのコミュニケ―ションは極めて希薄です。言い伝えを伝承してきた地域社会も存続の危機を迎えています。宮本常一の本に出てくるような世界は、21世紀の現代においては遠い国の昔話のような存在になってしまいました。マンションでは隣の部屋に誰が住んでいるのか分からない。普段コミュニケーションをとって居ない人たちと災害時に協力しあうことは困難な状況が容易に想像できます。

少し視点を変えてみる

宮本常一が本に書いた頃の日本は良かった、コミュニティの再生を!とか、自然の音を取り戻そう!と社会に向けて活動するのは大変な熱量が必要です。実際、難しいですよね。

災害への備えと言う話になるとつい肩に力が入ってしまいますが、ここではあえて肩の力を抜いて「個人でも出来る災害への備え」をゆるく(=手抜きという意味ではなくリラックスという意味で)見直してみたいと思います。

優先順位をつける

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一番大事な無くしたくないもの、取り返しが付かないものを考えましょう。自分自身もそうですし、家族であったり、ご友人であったり、様々だと思います。優先順位をつけることが難しいものもありますが、「イザ」の時には、大事なもの全てを守ることは難しいかもしれません。

余裕のある平常時にこそ考えてみることをお勧めします。また年齢や環境、社会情勢によってかわってくる部分もあるので定期的な見直しも必要ですね。

導入しやすく効果の期待できるものから取り組む

冒頭に津波の話を書きました。内陸部では津波の心配はありませんが、沿岸部にはない山林の崩壊・土石流などが心配事に入ってくるかと思います。こちらも個人で対策するのは中々難しいものです。

一方で、全国どこでも共通して効果の期待でき比較的簡単に導入できる「感震ブレーカー」のようなものもあります。阪神・淡路大震災では出火原因が明かなもののうち6割が通電火災と言われています。2011年の東日本大震災で発生した地震火災でも、主な原因となったのは電気関係の出火で、7割近くに達していたと言われています。まだ導入されていない方は検討してみてはいかがでしょうか?※自治体によっては設置補助金が出る場合もあります。詳しくはお住まいの自治体窓口にご確認ください。

感震ブレーカーの啓発(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2015/10/270105-1.html

【既存の分電盤に取り付ける簡易タイプも発売されています】
商品例:家庭用電源遮断器 /【商品紹介より転載】大地震発生時の二次災害通電火災防止に!/ブレーカーに取り付け、震度5強相当以上で確実に作動し、通電を遮断します! (作動範囲調整機能付)/多様なブレーカー、埋め込みタイプのブレーカーにも対応/暗闇でも数分間は蓄光樹脂で発光!/両面テープで取り付け簡単

災害対策自体を楽しむ

興味がもてないものは長続きしません。趣味もそうですし、災害対策も同様ですね。仕事は我慢してください(笑)。

国や自治体、メディアから沢山の情報が発信されているので基本的な災害への備えについてはもう皆さんご存じだと思います。例えば佛母寺のホームページでは非常食のローリングストック法が紹介されています。
https://www.butsumoji.jp/?page_id=2125

備えることが苦行となっては続きません。せっかく準備したものが有事に実際に使える状態にあることが何より大事ですので、自分なりの楽しみ方を見つけることが出来るといいですね。

【パン食も長期保存できるものが販売されています】
商品例:災害備蓄保存用パン/【商品説明より転載】長期保存のできるパン。災害時の備蓄用として最適/黒豆の粉砕したつぶつぶが生地に練り込まれています/柔らかいので幼児からご年配の方までおいしく召し上がれます/イージーオープン缶/1缶2個入り/防腐剤・脱酸素剤は使用しておりません/保存期間:5年

無理をしない

頑張り過ぎることはストレスに繋がる場合があります。また3日坊主となってしまっては意味がありません。自分に出来ることを継続し、少しずつその範囲を広げていくのが長く続けられる秘訣だと思います。

他者を助ける活動にも参加してみる

action自分やその周りの一番大事なものを守るために精一杯で余力が無ければ無理をしない方がいいでしょう。では余力がある場合はその力はどこに向けるとよいのでしょうか?

(1)公的な支援組織のメンバーになって組織を通した支援活動を行う
(2)各種ボランティア活動のメンバーになって支援活動を行う
(3)個人として出来る支援活動を行う

などから選択することになるかと思います。

私の場合は、上記の(1)にあたる予備自衛官になることを選びました。幸いにも家族の理解も得ることが出来、登用試験も無事通過。任官に向けた訓練も終了し、微力ではありますが奉職させて頂いております。

Jsdf予備自衛官の制度をご存じでない方向けに説明すると、普段は自分の仕事を続けながら、非常勤の特別職国家公務員として自衛隊員となる制度です。陸上、海上、航空で設置されています。私の場合は、通信(情報処理)技術者して参加しております。

支援される側(市民)から支援する側(自衛隊)に視点を変えることで新たな気づきもあることを期待しており、それが楽しみでもあります。

まとめ

自分で自分を守ることが出来なければ、家族や友人や地域の誰かに守ってもらうことになりますし、その上の関係も同様と思います。そのときの状況に応じて余力があれば誰かの為になることを出来ればよりよいですよね。災害への備えは長丁場です。自分に出来ることを継続し、少しずつその範囲を広げることで、長く続けて行きましょう。

2023.3
災害対策研究所 技術本部長 杉山茂雄
(陸上自衛隊 東部方面隊 予備一等陸曹)