「 6月のお言葉 」
未だ有らず、一味美膳をなし、
片音妙曲を調ぶものは
空海 弘法大師 性霊集
解説
人生に深みが出るのは、さまざまな経験をしたからこそ。
意訳:ひとつの味つけだけで美味しいご馳走を作ることも、ひとつの音だけで素晴らしい曲を作る
こともできません。そんなことが出来る人は、いまだに見たことがありません。
今年の梅雨入りは早くなるようです。
6月というと、昔から6歳の6月6日から習い事を始めると、上達すると言われていますね。
世阿弥の『風姿花伝』に「能楽の稽古は、だいたい七歳くらいで始めるのが良い。子どもが自然にやりだす仕種のなかに、きっと得意とするものがある。
心のままにさせておくのが良い。あまりこまかく教えたり、やかましく注意したりすると、子どもはやる気をなくしてしまって、能は止まってしまう。
この段階では大人の真似はさせず、能に基本的なこと以外はやらせてはいけない」といったことが書いてあり、6が重なるのは語呂が続き、数字が重なることを好んだ日本人に広まったようです。
何事も早く、そしてたくさんに経験させたいと思う親心に世阿弥から、焦らずにね!と言われたような気がします。
そうして一つずつ、少しずついろいろな体験や経験を積んできた我々大人はいかがでしょうか?
未だ有らず、一味美膳をなし、片音妙曲を調ぶものは
人生に深みが出るのは、さまざまな経験をしたからこそ。
ご年配の方から、「私らもうなんにもできなくてね。」と嘆くご相談をいただきます。
戦中戦後、高度経済成長の時代を駆け抜けてきた方たちのお話は、繰り返す返し縫いのようなこともありますが、いちいちに「そんなご苦労をされて・・・」と驚かされることも多々あります。
様々な経験がその人の人となりを成し、深みとして増していく。
人生の先人に敬意を表すとともに、私たちも厚みと深みを増すような経験をつんでいかなければいけないなと、お稽古始めの6月にあたり思うところです。
幼い子に負けず、また新しい経験を始めるのもよいかもしれません。
この時期、寒暖の差がございます。どうぞご自愛ください。 合掌