今月のお言葉 

  5月のお言葉

賢者の説黙は、時を待ち、人を待つ(げんじゃのせつもくは、ときをまち、ひとをまつ。)』  般若心経秘鍵

解説

ただいま奈良国立博物館で開催中の空海 KŪKAI―密教のルーツとマンダラ世界』 を拝観してきました。
空海お大師さまの生誕1250年を記念して、奈良国立博物館の総力を挙げた展覧会を開催します。とあるように、素晴らしい展示内容でした。

空海・お大師さまは、師僧である恵果阿闍梨(けいかあじゃり)から密教のすべてを伝えられました。

たいへんな苦労をして唐に渡ったお大師さまは、真言密教の第七祖 青龍寺の恵果和尚(けいかかしょう)との対面を果たします。
和尚は空海を見るなり「我、さきより汝のくるのを知り、待つこと久し」と述べ、恵果和尚は千余人の弟子をおいて、異国から来たひとりの若き求法者(ぐほうしゃ)に、ひとつの瓶(びょう)の水をもう一つの瓶に移し変えるように、自分の持っているすべてを授けられたのでした。

 

「写瓶無遺(しゃびょうむい)」一つの瓶の水を一滴もこぼさずにもう一つの瓶にすっかり移すように、師僧が知っている秘法を残らず弟子に伝えるのです。

 

このように密教では、「師資相承(ししそうじょう)」といって師僧が弟子に大切な秘法を伝えるには、師僧と弟子の息があう時機をとても大切にします。

 

かつて専修学院の入学式、校長先生をおつとめくださっていた門主さまは、密教で大切な印(いん)を袖の中で結んでいらして、まったく見ること叶いませんでした。
しかし、行がすすみ、さあこれから大切な伝授というとき、衣の袖から御手を出して、良く見えるようにゆっくりと印を結んで我々院生にお示しくださいました。

 

この時の感動は、同期生といつまでも懐かしく思い出されます。

 

弟子と決めたからには、出し惜しみせず、すべて教えきる。伝えきる。それを密教行者は使命としています。

 

そしてそれには、時機が大切です。

 

『賢者の説黙は、時を待ち、人を待つ
(げんじゃのせつもくは、ときをまち、ひとをまつ。)

鉄棒につかまりぶら下がるのがやっとの幼い子に、いきなりウルトラCの技を教えては、できないどころか大けがにつながります。

 

教える方もまたその時機を見極める力を持つことが肝要であるといえましょう。

 

連休が明け、本格的な勉学、仕事がスタートする時期、ぜひ「教わりたい!」「教えたい!」の息がぴったり合うタイミングを見つけられますようにとお祈り申し上げます。 合掌

 

奈良国立博物館空海 KŪKAI―密教のルーツとマンダラ世界』 

https://www.narahaku.go.jp/exhibition/special/202404_kukai/

(令和6年(2024)4月13日(土)~6月9日(日)
前期展示:4月13日(土)~5月12日(日)
後期展示:5月14日(火)~6月9日(日))

)