今月のお言葉 

  3月のお言葉

還源(げんげん)を思いとす

解説

 

早いもので、もう3月となりました。
この時期は、受験、就職、いろいろなことに挑戦して夢叶う人もあれば、悔し涙にくれる人もあったことでしょう。

 

弘法大師空海さまも若き日に「私とはいかなる存在であるのか」「本来の私に還りたい」と迷い、悩まれました。その若き日を振り返って書かれた文章がございます。

 

弟子空海、性薫我を勧めて還源を思いとす
  経路未だ知らず。岐に臨んで幾たびか泣く。
  精誠感有って此の秘門を得たり。
  文に臨んで心昏うして、赤縣を尋ねんことを願う。
  人の願い天順いたもうて、大唐に入ることを得たり。(性霊集巻7)

 

 意訳:
生まれながらに具わっている心が動き出して、本来の自分に帰りたいとの思いを強くいだくようになりました。
仏教を志したけれども、その中でもどの教えに向かえばよいのか、分かれ道に立って幾たび泣いたことでしょう。
そんな私の真心が通じたのか、密教に出会うことができました。
しかし密教を学ぶ段になると、日本では私の疑問に答えてくれる人もなく、学ぶことができません。
そこで、唐にわたり、長安でこれらのことに明るい師について学びたいとの願いを強く持つようになったのです。
このような私の願いを天(=大日如来)は聞きとどけてくださり、長安を訪れることができました。

 

この中の「還源を思いとす」の「還源」は、私とはいかなる存在なのか、本来の私・本当の私とは何か、と「おのれをみつめる」それがお大師さまの求道の出発点であったのでしょう。

 

私たちは本来、大日如来さまと同じ「いのち」をいただいており、一人一人が、かけがえのない価値をもつ存在なのだという「源に還り」、授かった「いのち」を精一杯輝かせて生きてまいりましょう。
大切な「わたし」であり、「あなた」もまた一人しかいない大切な「いのち」です。 合掌

 

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