今月のお言葉 

  11月のお言葉

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良工りょうこうが材を用いる
その木を屈せずしてかまう」

             弘法大師 空海『遍照発揮性霊集』

解説

 秋らしい落ち着きを取り戻し、全国から錦秋の便りがきかれます。
先日、まだまだ夏を思わせる米国カリフォルニア州ロサンゼルス市の高野山米国別院にて、【高野山真言宗北米大陸開教百十周年記念法会】が厳修されました。

北米大陸における本宗の開教開始から110周年を記念する法会であり、明治末期、日本人移民のおかれた厳しい環境と信仰の必要性の中、現在のドジャース・スタジアム付近の有志住宅の一室に布教所を開設したのが本宗における北米大陸開教の始まりとなっています。詳しくは高野山真言宗金剛峯寺Facebookをご覧ください。

華道高野山も華展、華道講習会、献花式をいたすとともに、五段華を現地ロサンゼルスの花市場で花材を仕入れていけました。

常のように丈が長い菊や枝は手に入らず、「見立て」をすることは難しいことでしたが、郷に入っては郷に従えと、とてもカラフルな五段華となり、地水火風空を表現することとなりました。

お大師さまのお言葉に、
「良工(りょうこう)が材を用いる その木を屈せずして廈(か)を構(かま)う」とあります。

意味:
優れた大工が材木を使うとき、真直ぐな木は曲げずに、真直ぐな特長を生かして必要な場所に使います。曲がった木は無理に伸ばさずに、曲がった木のままで、適材を適所に使って廈(大きな家)を建てるものです。

奈良の法隆寺は1400年以上前の世界最古の木造建築物です。
山から切り出してきたヒノキを陽の当たったいた向き、枝が出て葉が茂っていた節はそのまま生かして使ってからこその耐久力といえましょう。

明治・大正・昭和の戦中戦後・平成・令和の時代をアメリカの地で懸命に生きてこられた日系の皆さま、そしてそれを支えながら一生懸命にお大師さまの御教えを伝えてこられた歴代開教師の皆様に思いを馳せ、ロサンゼルスのまばゆいばかりの陽をあびて育った花をいかに生かそうか。
それぞれを大切に、生かせいのちの素晴らしい法会となりました。

お子さんや部下の適材適所を見抜くことはもとより、あなた自身の素材、魅力、本質が何であるのかを見極めることが「生かせいのち」の第一歩であると思います。 合掌

 

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