「 9月のお言葉 」
『お彼岸』
解説
九月になりました。暑く、台風に翻弄された先月でしたが、皆さまご無事にお過ごしでしょうか。先月お盆を迎えたと思ったら、まもなく秋の彼岸もまいります。
お彼岸はどう過ごせばよいのですか?と尋ねられます。
秋彼岸は、秋分の日を中日として前後3日間を合わせた7日間で、初日を「彼岸の入り」、最終日を「彼岸の明け」と呼びます。
向こう岸(彼岸)は悟りの世界を意味していて、対するこちらの岸(此岸)は苦しみや迷いに満ちた現実世界であります。
此岸から彼岸へ到るための修行・努力を「六波羅蜜行(ろっぱらみつぎょう)」といって、以下の教えを実践することをいいます。
1.布施(ふせ):施し与えること
2.持戒(じかい):(十善戒など)戒を守ること
3.忍辱(にんにく):耐え忍ぶこと
4.精進(しょうじん):向上心をもって努力すること
5.禅定(ぜんじょう):心静かに自らを見つめること
6.智慧(ちえ):真実の智慧を得ること
常日頃からこの彼岸を求める行為や努力がなされるべきですが、日々の生活に追われて、つい疎かになりがちなのも現実です。
そこで、せめてお彼岸の間は「慎み深く自らの心を見つめ直し、穏やかな心で彼岸に至る努力を表しましょう」というのがお彼岸の意味といえます。
難しくてわからないという方は、お家の仏壇をご覧ください。
六波羅蜜行を実践するご供養として六種供養がございます
1.布施 お茶やお水
砂漠に何日もさまよう人にとって、一口の水は命のよすがとなりましょう。
仏さまへお供えする湯茶は、布施を象徴しています。
2.持戒 塗香(ずこう)
良い香りの塗香を手に取り掌にも甲にも塗る行為は身と心を清める行いです。
戒めはわかっていても・・・という日常に、鼻腔を通して良い香りがふっと入ってくると、パッと場面が変わり、正気を取り戻すものです。
(塗香は無いですという方・数年前のお盆には佛母寺でも檀信徒に塗香をお渡ししました。高野山の大師堂などでは、少量で良い香りの塗香を通販でも手に入れられます。)
3.忍辱 お花
花を供えることは忍辱波羅蜜を行じることであるとされます。
道に咲く花は、何度踏まれてもまた、咲くべき時に向けてじっと耐え忍び、やがて時を得て花開きます。投げ出さず、毎日が同じことの繰り返しでも、真摯に生きることが忍辱波羅蜜です。
そして花はあなたに、そして周りの人たちに美しさと良い香りを放ちます。
4.精進 お線香(焼香)
線香・焼香は一度火がつくと消えることなく最後まで燃え尽きます。
これによって私たちは焼香から真実の道をたゆまず実践することの大切さを教えられます。
線香の良い香りのように、よい影響を与え続ける功徳のある行為であるといえましょう。
5.禅定 ご飯(飯食おんじき)
飯食を供えることは普段飽食している私たちには感じにくいですが、世界で起こっている紛争地域のことを想像してみてください。何日も食べられない飢餓状態の中、一口のおかゆを口にした時、どんなにか身も心も落ちつかせ、ほっとすることか。
その飯食のように、禅定は身を調え呼吸を静かに長く心落ちついて坐る時に得られる深い安らぎこそが禅定波羅蜜です。
6.般若(智慧) ロウソク(燈明・灯明)
燈明を供えることは、その明かりによって、暗闇の中でも足元を照らし先に歩むことができます。ロウソク(灯明)には闇を除き全てを明るくする(除暗遍明)力があります。これは仏様の知恵が私たち全ての迷いを除き、悟りを導くことにたとえられます。
私たちは灯明より迷いなき真実の知恵を得ることの大切さを教えられます。
ほら、すべて、ご家庭の御仏壇にありますでしょう。
皆さまのお家の仏壇は、菩提寺の本堂を小さく家庭に収まるサイズにしたものとお考え下さい。
その本堂と同じ御仏壇に向かって、お茶やお花やお線香一つ一つに意味があることを思い出して秋をお迎えください。
以上、長くなりましたが、お彼岸にあたりお話しさせていただきました。 合掌